『WHITE ALBUM2』の記録③ 千晶ルート振り返り感想

現在プレイ中のゲーム『WHITE ALBUM2』の千晶ルートが終わったので、感想を書き残しておきます。以下はネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在このゲームを未プレイで、今後ちょっとでもやるかもしれないと思った人はこの記事は読まずに何も知らないまま千晶ルートをやってほしいです。

 

ノーマル→麻理→小春→千晶の順でプレイ。

 

・千晶は終章で真っ先に登場してそのキャラクターに意表を突かれた記憶があります。なにせいきなり登場した初っ端から春希との距離感が近くて馴れ馴れしい。序章にてかずさ・雪菜と濃密な時間を過ごしてきた春希(というかプレイヤーである自身)からすると、今更こんな牛チチ女なぞ割って入る隙間なんてないわよ!!と思ってしまったものです。話を進めていくと、この女っぽくない男友達のような馴れ馴れしさが序章を経た春希にとっては心地良いことが分かります。

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女っぽくないからこそ気楽に付き合える女。しかし……?

 

・千晶は基本的におおらかというか大雑把というか、怠惰でめんどくさがりな感じの性格で、春希の助けがなければ進級すら危ぶまれるような有様でした。春希に対しては甘え上手なので春希もついつい助けてしまいます。……そう、そんなタイプのキャラだと思ってましたよ……春希が寝た後で春希の携帯に雪菜から着信が来ていたのを見て「ふぅ」ってため息つく瞬間まではな!!
その後も共通ルートの端々で何か裏がありそうな言動を残していきます。

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この「ふぅ」から感じる不穏な気配。

 

・千晶寄りの選択肢を選びつつ共通ルートを進めていくと、今までとはうってかわって千晶がどんどん女らしさをアピールしてきます。春希に近づくまでは女っぽく振る舞ってなかったのに、脈があると分かったら女の武器を使ってくるなんて……きたねぇぞ!ってなってました。さらに共通の終盤で千晶とキスをするというイベントが入ってしまいます。まだ個別ルートにも入ってない段階でのこの行為には流石にビビりました。フライングが過ぎる。
その後に雪菜とクリスマスイブのデートを経てそのまま千晶ルートに入れるのですが、ルート入った直後ですぐエロシーン。麻理ルートや小春ルートに比べても圧倒的に早すぎる……スピード感がまるで違いました。雪菜とのことで傷心の春希に対して女らしさ全開の包容力で優しく全てを受け入れてくれる千晶に、春希だけではなく自分もすっかり骨抜きにされてしまいました……。

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甘くて優しい堕落への誘い……抗えるはずもなく……。

 

・その後は2人で部屋に引きこもり、あらゆる負の刺激を取り払われ、ひたすら千晶に甘やかされる日々……こういう退廃で怠惰な状況ってめちゃくちゃすきすぎて、本当に自分自身も千晶という存在に溺れてしまっていました……。こんなに顔も身体も良い女が自分の部屋にいて甘やかされて怠惰にならないわけがない……。
しかしなんやかんやあって精神的に持ち直した春希は、この千晶依存症とも言える状況から脱却を図ります。ここは割と本気で立派な主人公だと思った。自分はこうなってしまったら抜けられる自信がない……。そうなると千晶はあっさりと春希の前から姿を消し、行方を眩まします。千晶が何故いなくなってしまったのかは気になりつつも、復調した春希はなんだかんだで雪菜とも復縁できそうな希望も見せつつ話が終わります。

 

・ルートの道中は『春希が堕落しきって何もかも投げ出して、刹那の快楽だけ求めて爛れた性生活を送るようになる』みたいな実質バッドエンド風味の締めも覚悟してましたが、千晶に入れ込んでしまったプレイ時はある意味それよりもつらいエンドでした……千晶が何も言わず去ってしまったのが悲しかった。
ここまでが千晶ノーマルエンドの概要と雑感になります。そう、まだ別のエンディングが存在するのである……。

 

 

 

 

 

問題の千晶トゥルールート。共通の序盤で小春が美穂子の件で春希に詰問しようとしたところを、春希に代わって小春と話をしようと喫茶店で2人きりになるシーンが新たに追加されていました。そこには誰だお前と言いたくなるような気弱な口調で話す和泉千晶!! こいつ!! 演技してやがる!! お、お前~~~~!!!! そう……和泉千晶は演技キャラなのであった……。実は学内で流れているラジオ番組でとある劇団サークルにめっちゃすごい演技力の女優がいると示唆されていたりして、周到に伏線は張られていたのである……。
さらに魔が差してドラッグパーティーに参加してしまった雪菜が男達からしつこく絡まれているところを、参加者の1人に扮して助け出すシーンが追加。ここで雪菜の知り合いである『長瀬』なる人物が実は千晶であることが判明する。こういうのが演技キャラの醍醐味だよな!!
その後で千晶と雪菜の2人で飲んだ時に雪菜から聞き出した雪菜の好きなタイプの男の話を、雪菜のマネしながら春希に語りだしたりするんですよこいつ。2周目じゃないと気付かないやつ~~~~!!
その後も「母親と不仲」と春希に話しておきながら春希と別れた後に母親と仲良く電話する、雪菜に口の中でサクランボの茎を結ぶやつやらせた後でそれをマネして春希の前で実践するなどのストロングムーブを次々と披露する千晶。 この辺の追加シーンで千晶の演技キャラとしての暗躍が明らかになる度に「お前お前お前お前~~~~!!!!」って叫びまくってました。

 

・そして共通から千晶個別ルートの話に戻ってきてからの追加シーン……そう、問題のコンビニ事件。春希と千晶2人での引きこもり生活が続き、ふとしたタイミングで千晶がコンビニに買い出しに出掛けた際の千晶視点のパートが追加されたのだが、そこで劇団サークル座長との電話で明かされる春希に近づいたのは演劇のための役作りの一環という残酷な真実を知ってしまう……。当然千晶が演技キャラでありその目的もおおよそ予測がついていた状況にもかかわらず、千晶ルート1周目の時点で千晶に相当入れ込んでいたこと、コンビニでの千晶のセリフが思っていた以上に容赦のないものだったこともあってかめちゃくちゃショックを受けました……。
この事件によって精神をズタボロにされてしまい、しばらくゲーム進める予定だったのに続きを見る勇気が全く起きず、1週間くらい枯れ果てたりしてました。現実逃避ならぬゲーム逃避。平日を経れば平常運転に戻れるだろうと思っていたけど中々時間がかかった……コンビニに行った際に千晶のことを思い出してしまった時はもうダメだ……ってなってた。

 

・更に話を進めていくと、実は千晶が春希達と同じ付属出身であることが判明。設定盛りすぎてモリンフェンになる。こいつ本当にサブヒロインなの??? 当初からラジオで流れていた『届かない恋』のファンであることを自称していたが、そっか……実際に学園祭で生のステージを観ていたんだな……。そしてついに、千晶の口から春希に対しても真実が告げられる……。

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ここからの千晶の告白には震えっぱなしでした……。

 

・千晶は学園祭ステージ上の春希達の三角関係、『届かない恋』が春希がかずさを想って書いたこと、それを雪菜が歌った意味……全てを見抜き、その上で『素材』として興味が湧き、この物語を元にした舞台を作ろうとしていたことを語ります。タイトルは……もちろん『届かない恋』。
春希達3人を取り巻く物語について「とりたてて何か大きな事件が起こるわけでもない、心理描写ばかりの地味なお話。観客の反応は良くないかもしれないけど…」 と表現してますが、WA2というゲームをメタ的に指しているなと思いました。おおっぴらな事件や事故は起きないし、心理描写がほとんどで人によっては地味と捉えるかもしれないけど、でも本当にそれだけの要素でここまで人の心を揺さぶってくるんだから凄まじい作品だと思います。


そして、千晶の冷徹な本性が露わになっていきます……。

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…………あ…………あぁ…………やめろ…………それ以上は…………

 

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ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

 

……はい、本当に心揺さぶられることばかりでつらい……いや最高に楽しいゲームですよWA2は……。上記の千晶台詞群、千晶ルートの中でもトップクラスに好き……嗜好……至高……。この足元から全てが崩れ落ちる感覚が堪らなく好きですね……。

 

・当たり前だがめちゃくちゃショックを受けてしまった春希は再び引きこもりとなり、試験にすら出席できなくなる有様に。流石に人間不信になってもおかしくはない。そんな様子を見かねた千晶は(舞台の稽古の追い込みで忙しくて今は春希に構ってあげられないよ?みたいなこと言ってたくせに)春希の家を訪れようとします。誰のせいだと思ってるんだ。
しかし春希の家には先客がおり、それはまさかの小木曽雪菜であった……! 春希の看病を終え家から出てきた雪菜と千晶が鉢合わせ、雪菜は春希から事情を聴いていたため、「長瀬」ではなく素の千晶として初めて雪菜と会話をすることに。

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全ての演技キャラに言ってほしい台詞No.1


・雪菜に色々バレてからの千晶の発言全てが愛おしすぎる……。めっちゃ機嫌悪くなってるし、悪者ぶるし、春希のこと好きなんだねって指摘されたら「利用しただけだよ」なんて言っちゃうし……はああぁぁ。
冬休み明けに千晶と雪菜が会った時に完全にウッキウキだったところを材料に雪菜から春希好きなんでしょあの時嬉しそうだったよね?と詰められた千晶が「演技だよ。だってあたし天才だし」ってめちゃくちゃな嘘つくのクソすき。いつもは飄々として余裕持ってて心の中では「全部演技なんだけどね☆」ってしてる千晶が、図星さされて動揺しまくってイライラしているところ見るのが今までほっんとうに楽しみにしてたんだ……。

 

・雪菜にも正体がバレてしまったせいか、とにかく悪者ぶろうとあえて挑発的な態度をとり続ける千晶。しかし雪菜は怒るどころか、逆に春希を支えてくれた千晶に感謝の言葉を告げる有様。予想外の反応に困惑しつつ呆れつつ、「強くて優しくて、そしてなんて愚かな女。ここで本音を出さないなんて、あたしには理解できない」と言ってその場を去っていく千晶。1人その場に取り残された雪菜は、先程春希の家で聞かされた「あいつ(千晶)には俺が必要だ」という告白を思い出し……。

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ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!(声にならない叫び)

 

……千晶はここまでの度重なる演技キャラとしての描写でヒロインの、キャラクターとしての格を上げ続けてきたけど、ただ1つのやりとりだけで、その相手の格を利用して、一足飛びに同格かそれ以上に自分を引き上げてきた小木曽雪菜とかいうキャラが本当に凄まじいし、それに耐えうるだけの描写の積み重ねをこっちもしてきてるんだよな……。春希のことで千晶に動揺があったとはいえ、演技キャラが相手の演技を見破れずに騙されるって、そういうことだからな……。

 

・雪菜の看病の甲斐あってか、春希も大学に復帰します。今一度千晶に会い、正直な思いを伝えようと劇団ウァトスを訪れる春希。そんな急な訪問にも顔色変えず、千晶は今までのような「和泉千晶」で接してくるのであった。ボロ雑巾のように捨てた男に膝枕をさせるな。……色々あった後だからこそ、ごく普通に可愛いことされると効く。

 

・舞台の脚本作りの追い込み中の千晶。しかし頭の中の雪菜が嘲笑い翻弄され煮詰まってしまうシーン。ここの「千晶の中の雪菜」が(本人であれば絶対言わないような)めちゃくちゃ辛辣な台詞を言ってきます。まあ単に千晶から見た(誇張された)雪菜像なのかもしれないですが、これ、千晶自身の深層心理を雪菜の形で映しているという捉え方もできると思うとしんどい。なんだかんだで千晶って付属の文化祭のころから春希の、そして雪菜やかずさのファンでもあるからさ……認めたくないけど雪菜やかずさには敵わないって心の底では思っていても不思議じゃないのかな……。

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実際かずさの存在が強すぎ問題。

 

・そんなタイミングで上原座長が登場し千晶と雪菜の件で色々と話し始めて、まあ嫉妬でもしてるんじゃね?という方向で納得する流れに。思わず座長も「とうとう姫も女に目覚めたか…」としみじみします。

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・帰り道に雪菜と楽しく通話しながら帰宅する春希。なんとなく良い感じに仲が戻りつつあるところにマンション前で待ち伏せしていた千晶。雪菜と電話してたところを見たせいかふてくされて拗ねているご様子。CGがすごく可愛い。

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また以前のように春希の部屋に転がりこんできた千晶が春希と色々と話をするのですが、「雪菜という人間の理解度」の話題がオタク解釈レスバトルみたいで面白い。春希の繰り出す熱い雪菜論に流石の千晶もフラストレーションを感じたのか白々しい拍手で応えます。以前から武也などから「宇宙人」などと評されていた千晶ですが、『こういう時の千晶は…偽悪的な千晶は、ちょっとだけ地球人が入る』という春希の傍白がとてもベネ。
そして千晶は「切り札」の存在を仄めかしながら春希を押し倒し……

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CGがすごく可愛い。……流石にエッチがすぎる……狂おしいほどすき……。
千晶の誘惑に対して春希が「お前じゃもう立たないぞ」って言ったら「本当か確かめてあげる。あたしの口でおっきくなったらペナルティとして中に出してもらうからね」って実にエロゲらしいセックスバトル会話は草だった(普通にやってほしかった)。

 

・ここからの流れがめちゃくちゃ好きで、千晶は同棲していた時と同じように春希の身体を求めるんですけど、春希からしてみれば演技してたってことを知ってしまった以上むざむざ受け入れるはずもなく、お互いにあの時は「演技だった」という認識を共有した上で千晶はなおも春希に愛を囁いて……。
これはいわゆる「自己言及のパラドックス」で、春希への愛が「演技」なのか、「演技している」ことが「演技」なのか……嘘が混じり合ってどれが真実が分からなくなるって話なんですけど、私個人の趣味として「常に演技をしているような人物の本音はどこにあるのか」という問題がどちゃくそ好きなんですよね。やっぱ演技キャラにはこれが欲しいよなぁ~~~って展開がしっかり来てくれたので思わずガッツポーズ。加えて「その本人すら今の状態が演技かどうか分からなくなっている」とより高得点なんですけど、今回の千晶もこのパターンだったのかなと思ってます。最高。

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「自己言及のパラドックス」の分かりやすい例。こういうの大好き。

 

・ともかくもせっかく春希に迫ったのに切り札は切らないまま、かつ雪菜をまだ抱いたことがないという衝撃的な告白を引き出してしまい男女共に萎えてしまったため、千晶はそそくさと帰り支度をしてしまいます。千晶の「タチ悪いなぁ。プラトニックであれかよ…」という台詞に思わず共感して苦笑い。実際こじらせ具合がひどい。でもこの情報によって千晶の中では“春希への思いの深さ”みたいなのの雪菜との決定的な差を見せつけられてしまったのかなぁと思っています。
ここらへんで春希はようやく今日の千晶の不自然さに気付き、「全てが演技だったのか?」と疑問をぶつけます。千晶は意固地になって否定するも、「本当のことを言うときは両手に胸を当てる合図をくれ」と一方的に約束を提案する春希。結局別れる最後まで千晶からその合図はしなかったものの、春希から見ても分かるくらいにカッコ悪い演技をしてしまっていた千晶がとても印象的なシーンでした……。

 

・ついに迎えた劇団ウァトスの公演『届かない恋』の初日。当初は「行くわけないだろ」と言っていた春希がなんと雪菜を連れて一緒に公演を観に来ていることに気がついた千晶は、怒りが湧きつつも「凄いもの見せてやる」とより一層気合いを入れます。しかし、千晶の身体は明らかに不調のようで……。
余談ですが、千晶が雪菜とかずさを演じるために衣装(立ち絵)が本人らのものになるんですが、その乳が豊満であるが故に本人達との絵面のギャップが凄くて……エッッッッッッ。特にかずさのバンド衣装……露出……。

 

・舞台は続き、3人で作った曲『届かない恋』をステージで披露する直前、榛名(かずさ)が和希(春希)にキスをするというシーンが繰り広げられます。(春希が知る)事実とは異なる展開に対して、千晶なりの悪戯な仕掛けではないか?と解釈する春希。

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…………IC2周目をやったプレイヤーにとっては当然ご存じの通りですが、学園祭の後夜祭の時、最初に春希にキスをしたのはかずさの方で、この展開はしっかりと史実通りなのです。な~~~にが「あえて違う展開を用意してきた。」だこのおバカ!!!! 知らないのはお前だけだよ!!!!
そしてこれは裏を返すと、この脚本を書いた千晶もまたキスするとしたらかずさの方であろうことを推し量れていたわけで。千晶は学園祭のステージ上のかずさを見てますし、何よりキスして逃げてきた直後のかずさと会っている(ドラマCD「祭りの日 〜舞台の下の物語〜」5章)ので、そこから持ち前の観察眼で見抜いたとみるべきでしょう。

・いよいよ公演もクライマックスといった幕間の中、千晶はついに倒れてしまいます。原因は今まで止まっていた月のものが一気に来たとのことで、つまりは妊娠してなかったということが明らかに。「切り札」を失ったことへのショックもある中で、座長も「身体は大貧血、心は大失恋」などと無駄に上手いこと言いながら代役の手配を進めようとします。しかし、千晶は舞台に登壇することを止めません。
物語は続き、現実とは大きくかけ離れた未知なる領域へと突入します。3年後、雪音(雪菜)はボーカリストとしてプロデビューし更には和希と交際をしていたものの、留学をせず日本にとどまっていた榛名が和希と過ちを犯してしまい……ついには雪音と榛名は彼を巡り決裂してしまいます。舞台で綴られる春希達3人の物語のifストーリー……。「Twinkle Snow 〜夢想〜」でもそうだったけど、選択肢のないICから派生してこういうパラレルワールドを示唆されると本当にエグい……。

 

・ともすれば現実の雪菜以上につらい立場となってしまった「初芝雪音」というキャラクターを、もの凄いバランスで表現しきる渾身の演技で「完成」させていく千晶。それを見た春希は、雪菜を、かずさを、そして千晶自身の存在を雪音の中から見出していきます……。そして雪音の感情が発露されるシーン……

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ズルすぎるでしょ…………両手に胸を置く!! それすなわち!! 春希が言った「本当のことを言う合図」!!
CGも台詞も完璧すぎて無理…………抗えるわけがない…………。

 

・公演は割れんばかりの拍手の中でなんとか無事に終了。直後に再び倒れた千晶が気がつくと既に真夜中の1時、それでも確認せずにはいられないと春希の姿を探しに出ようとします。そんな時、和希役を演じていた団員吉田が「舞台以外でもよろしくしたい」と気持ちを漏らすも、千晶は「あたしには、舞台の下に惚れた男がいるんだ」と吉田の制止を振り切り別れます。
以前「舞台の上であたしに惚れない男はいない」という千晶の言葉に対して反抗的な態度を見せていた吉田君も、蓋を開けてみればしっかり陥落してしまったという……やっぱり千晶には勝てなかったよ……。ほんと千晶は恐ろしい女だ(そこがいい)。

・急いで最寄り駅にたどり着いたものの既に駅構内は締め切っており、思わずその場で泣き崩れてしまう千晶。それを見た春希の「瀬之内晶が泣いていた。瀬能千晶が号泣してた。和泉千晶が、泣け叫んでた。」って表現するテキストがとても好きで、マジで個人的なあると嬉しい描写ポイントを確実に押さえていってくれている感がすごい。
春希が目の前に現れた上でなおも「(あたしを)捨てたくせに」とひねくれる千晶に対して、雪菜ではなく、千晶を選んだことを告げる春希……! 自らの力で立ち上がった千晶を強い抱擁で迎え入れ、2人は熱い口づけを交わすのであった……。
……素晴らしい幕の引き方だ……と感動に浸りつつ、このままEDに入るのかな?と先を進めると、公演終了後に駅で雪菜と別れる回想シーンが入り……

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ぐっ…………うぅ…………ううぅ…………

 

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…………………………………………つらすぎる。

雪菜がはっきりと恨み憎しみの言葉を口にしているのが本当に苦しい……。しかしながら、それこそが雪菜やかずさからようやく卒業しようとしている春希に向けた雪菜なりの餞で、最後に残った意地の「演技」なのかもしれません……。
何より、この雪菜との別れ方でEDに入るからビビった。後味悪すぎぃぃぃぃ。

 

・ED明けの後日談。千晶は再び春希の部屋に住みつくようになり、2人で残りの大学生活を謳歌していました。あの頃と同じようにふざけてじゃれ合いつつも、ふとしたタイミングで千晶は自分をさらけ出します。

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…………千晶…………お前ってやつは…………。

千晶はやっぱりあの学園祭で輝いてた3人のことが大好きで、そして自らの手でそれを壊してしまったことへの罪悪感を持っていたんだよな……。本当に良い……。それこそ芝居じみてクサい台詞ではありますが、千晶なりの決意の現れであるこの流れはとても良かった……。

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そして春希は春希で、春希なりの“演技”をしてこれからも千晶の側に寄り添い続けることを誓います……。この描写、まっすぐに千晶を愛したいけど照れ隠しで自分を欺くための“演技”という見方もできるかもしれません。


・そして最後に、千晶トゥルールートを締めくくった千晶のモノローグ……

『ね、春希』
『本当はね、とっくに治ってるんだよ、あたし。あんたへの気持ちだけ、ねじ曲がってないんだよ』
『だけど、これからも演技を続ける。あたしはちっとも変わってないって、ずっと春希を嘆かせてやるから』
『これからもずっとあんたの側にいるために』
『あんたの傷の痛みを忘れさせる、ピエロでいるからね?』
『だから春希…』
『ずっとあたしを叱るために、ずっとあたしと一緒にいてね』

 ……実に千晶らしいと言いますか、結果的にはお互いがお互いのために演技を続けていこうという構図になってますが、今の春希と千晶の間なら演技なんかいれなくても大丈夫なくらい深く繋がっているはずなので、こちら側としては少しいじらしい終わり方とも思えます。しかしこれもまた良し、千晶は演技をしてこそだもんね。
この後の2人の将来までずっと追いたくなってしまいそうになる、そんな素晴らしい締めでした……。ありがとう和泉千晶、本当にありがとう……。
…………これにてこのクソ長い感想文もようやく終わりに……………………ならない。このゲームは残念ながらWHITE ALBUM2なので、千晶へのクソデカ感情をまだ終わらせてくれないのである。

 

 

 

 

 

・まさかの延長戦、すなわち解放されたIC3周目の話をしよう。このゲームのやり口もいい加減分かってきたので、これ絶対付属時代の頃の千晶視点のパートをやるんダルォォォ!?と思いながらスタート。
学園祭ライブを鑑賞する千晶の描写が追加されるも想定の範囲内。こんなもんじゃねぇダルォォォ!?と先を進めると果たして現れたのは武也と付属制服立ち絵の千晶。可愛すぎる。こいつが見たかったんだよ~~~。そして千晶は武也を通じて春希のことと紹介してもらおうとし…………

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おいバカやめろ

 

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バカ!! やめろ!!

 

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加減しろバカ!!!!

 

・『届かない恋』の意味、春希とかずさの両想いっぷり、あまつさえ武也の本命でさえ、全てを看破する観察力……追加パート自体はそう長くはないものの、むせかえるほどの濃厚な千晶っぷりを見せてつけてくれました……。
ついさっきまで春希に対しては素直な面も出すようになった丸千晶を見ていた直後に、コンビニ事件と同レベルの千晶成分を再びぶっかけられたので、ギャップで酸欠になるかと思いました……やっぱ攻略される前の千晶はコレだぜ……。
それと千晶ルートの途中でも触れましたが、舞台『届かない恋』にて榛名(かずさ)が和希(春希)にキスをするシーンは、やはり千晶としては学園祭の時点で2人の関係について確信を持っていたことが分かります。ただ実際に付き合っているのは春希と雪菜で、その事実をここで知った上であの脚本を書いたのだから……うーん千晶。
キャッキャしながら最低な発言をする千晶(そういうところが最高に好きなんですけど)、武也はこの態度に当然ながら怒り、春希達には絶対に会わせないと宣言します。千晶はこの場では大人しく引き下がるものの、そのあくなき興味は消えないままであった……そして物語は3年後の千晶ルートへと続く……。

 

 

 

 

 

・というわけで千晶ルート+IC3周目の振り返り感想となります。クソ長い。さらにドラマCD「祭りの日 〜舞台の下の物語〜」でも出番があるんですがここでは割愛。ただこのドラマCDの初出が2010年8月、序章発売後であり終章発売前という事実にびっくりします。よくやったな……。自分は仮に終章前に聴いてたら多分色々と気付いちゃいそうなんで、先に聴かなくて本当に良かったなと思います。

 

・和泉千晶というキャラクターについて語らせてください。私は和泉千晶というヒロインのことが今まで触れてきたコンテンツのキャラクター全部ひっくるめても5本の指に入るくらい大好きです。本当にびっくりするくらい私の好きな一要素を丁寧に磨き上げられたキャラなんです。
千晶を一言で表すと「演技キャラ」で、普段の性格は演技である・人や場面によって最適なキャラを演じるといったものと私の中では定義づけてます(仕事としての演技人というより日常で演技をするタイプ)。私はこの演技キャラという属性が好きで、ただ属性そのものはそう珍しいものでもないため色々な作品でその要素には触れることができます。
ではなぜ千晶をここまで好きになったのか。それは「変人力」「秘匿性」によるものであると考えています。

 

・「変人力」は千晶の「全ては演技のため」という行動理念のことを表しています。より高い演技をすること以外は興味がなく、そして演技のためであれば平気で男を騙し、身体を重ねる、演技特化型のヤベーやつ。一般人とは価値観が決定的に異なっていて、作中でもそれを象徴する言葉としてしばしば「宇宙人」が使われていました。

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周囲からそういう風に言われるような女が好きなんですけどね!!


私は演技キャラとはまた別ベクトルの嗜好として、唯我独尊・傍若無人といった普通の人達には理解されないような言動をとる「変人キャラ」が好きで、私の中の基準にあてはめると千晶もまた変人キャラとしてとても魅力的に映りました。
そして変人キャラを語る上で欠かせないのが「周囲の反応」。変人キャラがものすごい奇行をすることよりも、周囲の「あいつは理解できない」という反応の描写をしっかり入れてくれる方が個人的にはよりキャラが引き立って嬉しかったりします。そういう意味ですと、千晶ルートでは武也が助演男優賞ものの素晴らしい活躍をしてくれました。武也が千晶に対して辛辣な評価を振りまく度にありがてぇ……と思いながら千晶のことがどんどん好きになっていったよ……IC3周目の千晶vs武也もめちゃんこ良かった……。

・「秘匿性」はそもそも和泉千晶というヒロインが演技キャラであることがルート2周目の中盤まで隠されていたことを指してます。要は私(プレイヤー)もその演技にずっと騙されていたという点が非常にデカかった。
演技キャラ自体は他作品にも数あれど、大抵は演技していることが早い段階で分かってしまうことが多いです。しかし千晶はかなり隠してくれた。個別ルートの終盤で明かされるとかそんなチャチなもんじゃねぇ、演技がバレないまま1回ルート終わった。それほどまでに隠蔽されてたんだ……この徹底っぷりは本当にグッドでした。
当然十何時間とそれに付き合っていた私からすれば騙されたと知った時の衝撃・カタルシスはとんでもないもので、上で書いてある通りコンビニ事件の時はガチのマジでめちゃくちゃ落ち込んでました……。もちろん他の作品でもそういう体験が出来ないわけではないと思いますが、媒体がギャルゲー形式のゲームということで、主人公の目線を通すことであたかも自分が騙されたかのようなよりリアルな騙され体験が出来た点がとても優れていました。字面だけ見ると完全にヤバい女にハマってしまった人だこれ。まあ悪女要素とかも好きだからな……。

 

・そういうわけで演技キャラが大好物な私にとっては、今回の千晶のように演技キャラとは露知らずに出会い、そして自分自身までもその演技によって綺麗に騙されたという体験ができたことによる評価値の高さは相当のものとなりました。
不意打ちによる出会いというのはある種の嗜好家にとってはかなり重要な要素で、例えるなら叙述トリック好きがそうとは知らず叙述トリックにひっかかることであり、NTR好きがそうとは知らずNTRものに遭遇することであるわけで。そんなの嬉しいに決まってる。
その不意打ちというのが本当に難しい問題で、千晶みたいなキャラが大好きでこういうキャラをもっと知りたい反面、「千晶みたいなキャラ教えて」とは口が裂けても言えないんですよね。なぜなら勧められたキャラが演技キャラに類するものと分かってしまうので騙され体験ができないから。まさにジレンマ。だからこそ何も知らぬまま自然に触れることへのありがたさが大きいし、今回千晶というヒロインに出会えたことへの途方もない幸運に感謝するほかない……。

 

・というわけで私にとって和泉千晶は本当に奇跡的な邂逅を経て、そしてここまで語り尽くせるほど好きになれた素晴らしいヒロインでした。ありがとうWHITE ALBUM2、ありがとうLeaf、ありがとう丸戸史明……。
…………お願いだから千晶がメインのFDを出してくれ~~~~千晶と雌猫プレイするHシーンとか~~~~付属の頃に春希に接近してみたって設定のifストーリーとかどうすかね~~~~短編小説とかでもいいからさ~~~~頼むよ頼むよ~~~~(強欲な壺)。


・実際のところ、こんだけ濃いキャラの千晶ですらこのゲームではあくまでサブヒロインという現実には本当におののくばかりです。試しに千晶のグッズがないか調べてみたんですけど、WA2のグッズはほぼほぼかずさ雪菜の2人のもので、サブヒロインのグッズなんて本当にごく僅かなものでした(キレてた)。それほどまでに格差があるというか、この作品はあくまでも春希とかずさと雪菜の3人のための物語なんだなって改めて思いました。
正直に言えば、千晶ルートをクリアした直後なんかは千晶が好きすぎるあまりその事実を受け入れにくかったりもしました。この後の話には千晶は何も関わらない……その思考が無意識に次へ進むことを拒んでいたのかもしれません。
流石に時間を空けた今だとそんな気持ちも払拭できてますが、ただこの千晶への感情はちゃんと形にしておきたいと思い、この記事だけは一切妥協せずに仕上げた次第です。クソデカ感情オタクのクソ長怪文書の誕生である。

 

・この後はこのゲームの本分たる雪菜と、そしてかずさとの話が中心になると思われます。おそらく、いや確実に千晶に勝るとも劣らないほど心を揺さぶられ、そしてもしからしたら「やっぱり雪菜(かずさ)なんだよなぁ~~~~」なんて言ってるかもしれません。所詮はチョロいオタクなもので、印象や熱なんて簡単に上書きされてしまいがちです。
だからこそ、私は千晶ルートが終わって次へ行く前にこの記事を作り上げなくてはなりませんでした。この千晶への想いが消えてしまう前に、全てをここに残していこう。今後雪菜やかずさに惚れてしまっても、幾度の冬が巡り、5年10年と経った後でも、ここに戻ってくれば千晶への気持ちを思い出せる、この怪文書こそが私の人生のセーブデータなのだから……。

 

 

追記:下記の記事の最後の方にも千晶のこと書いてます

『WHITE ALBUM2』の記録④ 雪菜ルート振り返り感想 - 月を仰ぐ虫

 

 

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